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文化的消費活動の日記

文京洙 『新・韓国現代史』

 

新・韓国現代史 (岩波新書)

新・韓国現代史 (岩波新書)

 

なんの本がきっかけか忘れてしまったのだが「そういえば、韓国の歴史って全然知らねーな」と思って手に取る。韓国の現代史を近代の極東における中国を中心としたパワー・バランスや関係性から書きはじめ、日本による併合・日本敗戦にともなう解放、その後の米ソによる分割統治、朝鮮戦争、独裁や民主化といったトピックが振り返られている(朴槿恵政権の誕生とセウォル号事件まで)。新書のコンパクト・サイズながら内容の濃い良書だと思った。韓国の対日感情の変遷、逆に日本の対韓感情の変遷にもしっかりとページがさかれている*1。本書をきっかけに「東アジアのなかの日本の歴史・姿」を自分なりに学んでみたい気持ちになっている。あるいはK-Popもこうした政治的な文脈や社会の成長から学んでみたい気もする。

本書を読みながら強く思ったのは「韓国で起きたことは、これから日本でも起きる(あるいは起きている)」ということで。とくに韓国における格差社会とそれにともなう社会の分断・衰退は、あるいは軍部独裁時におけるマスコミの懐柔・言論統制や社会の「浄化」*2は、日本の現状とも重なって見えるし、学ぶべきところが多いように感じる。似たような問題を抱えている一方で、大きく異なっているのは、両国における「民主主義」のあり方だろう。

韓国における民主主義が時に多くの流血を伴った闘争によって勝ち取られたものだったのに対して、日本は戦後に与えられたものとしてなんとなく運用されてきた、という対比が本書によってはっきりと自覚できるようだ。韓国の歴史のなかで政治思想の異なりから内戦状態や虐殺事件が繰り返されている、というところに大きな国民性(?)の違いを感じもするのだけれど、民主主義を与えられた日本は、この「劣化」と「支配」をなんとなく受け入れる暗い将来が現実化するような気がしてならない……などと上から目線で評価するような態度さえも憚られるような昨今だ。

*1:一方で、韓国の対中感情や他のアジア諸国、ヨーロッパとの関係についてはほとんど記載がないため、他書もあたりたいところだ。

*2:1980年にクーデターで政権を奪取した全斗煥政権下では、暴力団、左翼、売春婦などが約6万人拘束され、そのうちの4万人が軍隊にぶち込まれて「再教育」された