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文化的消費活動の日記

伊丹十三 『女たちよ! 男たちよ! 子供たちよ!』

女たちよ!男たちよ!子供たちよ! (文春文庫 (131‐5))

女たちよ!男たちよ!子供たちよ! (文春文庫 (131‐5))

 

引き続き、3年ぶりの伊丹十三強化月間。こちらは現在絶版中、比較的手に入りにくいエッセイ集。著者が体験した子育てに関する文章が中心で、後半は子育てについての鼎談を、著者、岸田秀河合隼雄といった精神分析関係の人たち、その他作家とか学者の人、という組み合わせでおこなった記事が収録されている。一番最初に来るのは、田原節子(この当時、村上節子)と男女のセックス感覚について聞きあう対談記事。

伊丹十三がこの当時、精神分析にハマっていたのは、今となっては、古びちゃっている部分であり、ある種汚点めいた部分もあると思われる。けれども、悪い本じゃない。精神分析の言葉に寄りかかりすぎの部分はあるかもしれないが、子育てにおいても伊丹十三の言葉は、指導的であり、示唆的である、と思った。

今の育児っていうのは母親本位なんです。子供は教材なんです。子供という教材使って「母親が」どれだけいい成績とるかっていうのが育児なんです。

これである。「正しい」育児ハウトゥーを求める親たちへの批判的な発言なのだが、これは刊行から40年近くたった現在でも有効だと思われた。あと、伊丹十三がどんな父親だったか、が垣間見れるのがこの本のとても良いところ。