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文化的消費活動の日記

ハン・ガン 『菜食主義者』

韓国の作家、ハン・ガンの本を読むのはこれが2冊目。

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ギリシャ語の時間』は、静的、かつ知的な雰囲気が漂う作品だったが、この『菜食主義者』はかなりスタイルが違う作品。韓国社会における男性優位の醜悪さ*1が冒頭から描かれ、かなり世俗的な/社会的なものの描かれ方と、グロテスクな夢/イメージに取り憑かれる女性が抱く鮮烈な幻想の描写との組み合わせが実に面白い。3つの中編小説が連なって大きな物語を編む。2つ目の作品もイメージに取り憑かれた(今度は)男性が登場し、より映像的な描写は色彩を増すように思った。

最後の作品はやや蛇足的に思えたが、ハン・ガンが現代のアジアで最も力ある、注目すべき作家であることを再確認できるような本。読みながら想起したのはポン・ジュノの『パラサイト』や、イ・チャンドンの『バーニング』で、映像と小説の世界が、韓国のクリエイティヴの世界で繋がっているようにも思えてくる。

*1:韓国の男性は女性をお姫様のように扱う、と聞いたことがあるが、それとこの男性優位はどのように整合性がとれているのだろう……?