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文化的消費活動の日記

坂本龍一 後藤繁雄 『skmt 坂本龍一とは誰か』

 

坂本龍一への1996年からと、9.11を挟んで、それ以後の2006年ごろまでのインタヴューをもとにした本。この96年から2006年という期間は、すでに「世界のサカモト」という評価がされてしまいつつ、オペラ作品《LIFE》のような今を持って評価が定まっていないと思われれる(というか今後も肯定的に評価されることはなさそうな)大仕事を含み、オリジナル・アルバムもまだ再評価されるには至っていないながら、ジョビンへのアプローチなどで優れたアルバムもだし、政治的な発言も注目されつつある、という至って敏感な、と評して良い時期だと思う。GEISHA GIRLSの熱狂のあと、中谷美紀のプロデュースは含み。個人的にはこのあたりの坂本龍一の仕事にもっとちゃんと向き合ってみたいと思う。

『skmt』、『skmt 2』の合本。いずれもインタヴューの断片を編集し、リニアなストーリーが語られるわけではない、その断片の集積・星座的な配置で物語るという姿勢は、時代を先取るようでもあるし、単なるファッションにも見えてしまう(インタヴュアーの存在が前に出すぎているのがその要因のひとつだ。黒子である存在が黒子として目立つ、そんないやらしさがある)。坂本龍一の生い立ちを知るには『skmt』の部分が役に立つが、坂本龍一のセンスの「速さ」を知るには『skmt 2』だろう。20年近く前のインタヴューであるはずなのに、まだ生きたネタが収録されていることに驚く。