sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

『ブロックチェーン技術概論 理論と実践』

 

「そろそろブロックチェーンがなんなのかわかっておく必要がある……」と思った調査隊は、ライトな解説本の暗号資産って儲かりますよ的なセールストークにうんざりしていたのだった……ところに、おすすめしてもらった本。まぁまぁな値段はするが大変に良い内容でビジネスでブロックチェーンを使うかもしれない非-技術者には、まずこの一冊、と薦められる内容と思った。ビジネスで使っていく場合の気をつけるポイントや検討プロセスまで解説している。技術者向けにはもっと実装ベースの話が充実したほうが良いのかもしれないが、本書も読者向けのサポート・ページをGitHub上に展開していてありがたい。

技術的な話、数学的な話を飛ばしたとしても、この技術によって社会的にはどのような意味やインパクトがもたらされるのかを丁寧に説明しているので、わたしのような数学バカ(文字通り、数学ができなさすぎるバカ)でも有益だし面白い記述が多かった。とくにしつこいぐらいに書かれているのが信用(トラスト)の話で、このへんは経済学や社会学に取り組んだ人にはとっつきやすいと思う。

個人的には、PoWのために最適化されたASIC(特定用途向けの集積回路)を使ったマイナーが有利になりすぎちゃうから、PoWのアルゴリズムにASICへの耐性(ASICで計算しにくいような要素)を盛り込もうぜ、みたいな話が面白かった。世界の健全性を保つためにあるときゲームのルールが書き換えられる。それ自体はまったく特別なことではないのだが、ブロックチェーンの世界と現実社会とのアナロジーの関係を見出すことができる。