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文化的消費活動の日記

千葉雅也 『現代思想入門』

こんなに明晰に、かつスルスルと読めてしまう現代思想入門があって良いのだろうか。驚きをもって受け入れるべき新書。すごい。デリダドゥルーズフーコーというフランス現代思想の中心人物のエッセンスを時に生活にグッと惹きつけながら解説し、さらには現代思想が下敷きにしているニーチェ、カント、フロイトマルクス、そしてラカン、そしてポスト構造主義のそのさきの思想家たちまで紹介している。

帯には「人生が変わる哲学。」とある。どこまでの有効射程をもつかはわからないが、ここまでリーダブルな思想に関する本が存在することは、たしかに人生を変えてしまう可能性があるかもしれない。同じ著者の『勉強の哲学』の発展型にも読めるし(とくに付録として収録されている現代思想のテクストの読み方の箇所などは具体的に『勉強の哲学』の延長として捉えられる)、「こんなことを言うと◯◯と言われるかもしれないが……」みたいに挿入されるツッコミが絶妙に楽しい。

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ここからじゃあ何を読むのか。一冊あげるなら松本卓也の『創造と狂気の歴史』をあげてみたい。

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個人的に本書のなかでもっとも印象に残ったのは、あとがきにある、本書の解釈がある時代の「駒場」に流通していたものの一例である、という述懐で、それは単なる思い出話的な注釈ではなく、グローバルなものとローカルなものの対比のなかで受け取られるべき言葉のように思えるのだった。「世界哲学」ではない「(フランス)現代思想」の「日本における解釈」、その擁護。その肯定。