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文化的消費活動の日記

干場義雅 『究極の私服』

 

究極の私服

究極の私服

 

テストステロンのおばけみたいな男性の姿を最近ネット広告でよく見る。調べたら『LEON』とか『OCEANS』とか男性ファッション誌をヒットさせた編集者とのことで。そういう人が書いている「大人のためのカジュアル・ファッション」の本だから、どれだけ噴飯もののことが書いてあるのか楽しみで読んだのだけれども「普通でいいんです、普通で」というキーワードが強調されており、拍子抜けだったのが逆に面白い、というか。「自分の体のサイズを把握すること」とか「ネイビージャケットは万能だから絶対持っておけ」とか本当に普通のことが書いてある。

銀座とか新宿とかの六本木周辺のカフェ、あるいはレストランで高級ブランドの洋服に身を包んだ女性を連れているおじさん(本人が高級ブランドを着ているわけではないのがポイント)が、こういう格好していたら良いんじゃないか、と思うし、「普通と言われても普通がわからないんです」という人にはためになりそう。趣味の悪くない金持ち向けか……*1

休日は90%以上の確率でMUJILABOの白Tシャツに、UNIQLOジーンズで過ごしているわたしには、ほとんど関係ない本である。「素敵なジャケットだな」と思っても、休日ジャケット着て行く場所もわからないから「買っても着ねえな」と思って買えない生活。白Tシャツにジーンズじゃレストランには入れないかもしれないけれど、子供がいるから「レストランにいく」という選択肢がない生活。本書を読むことでいかに自分が無オシャレの真空状態にあるかを認識できはする*2

本書における「普通」に到達できる日がくるのか……? とは思うのだが、ひとつ気になるのは、こういうオシャレの前提が「女性からモテること、よく思われること」になっていること。それは大事なことなのかもしれないけれど、果たしてこういう格好で本当にモテるのか? そして、モテることが「究極の私服」を支えていて良いのか、貧しくないか、とは思う。

*1:「オーダーシャツは敷居が高い、と思うでしょ、でも2万円も出せば、オーダーシャツは作れるんです」(大意)とか書いてあって力強くツッコミたくなるけれども。シャツ、2万は高いよ、って(それに百貨店だってもっと安くオーダーシャツを作れるし)

*2:もちろん、子供がいてもオシャレをしているお父さんはいらっしゃるので「子供がいるとオシャレできない」というのは、言い訳にすぎないのだけれども……。そう、なんか俺の生活圏のなかで「オシャレなお父さん」のイメージは『men's FUDGE』とか好きそうな、タグがついてるニット帽かぶって、パーカーのうえにベージュのトレンチとか羽織ってる……みたいな、そういう感じなんだけど、俺はそういうのじゃないんだよ! っていう