「新潮」に掲載されたことから周囲でも「面白い!」と話題であったのだが、結局読み逃していた作品。読み逃しているあいだに野間文芸新人賞受賞。いや、すごい。これが小説第一作とはまったく思えない筆致、完成された文体。とくに「知子はもしかして僕のことをちょっと好きだったりするのだろうかと思う。というか、思ってみる」(P. 72)、この「というか」で主人公のモードが即座に切り替わっていく感じが新鮮だし、これまでに読んだ著者の思想に関する文章とも繋がっていく(今年は3冊も読んでいたんだなぁ)。
ゲイの若者の生、という生々しい/なまめかしい主題においては、ハッテン場のくだりとかがにわかに想像しがたく、読者であるわたしの生にはなかったものへの想像力を到達させてくれる。そして、もうひとつ、主人公が修論を書くプロセスという主題についても、どのようにして書いていくのか、その苦悶がドラマ化されている(書くことに関する小説でもあるこの主題は、メタフィクション的である)。東京という都市についての描写も良かったなあ。
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