sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

細野晴臣 『細野晴臣インタビュー THE ENDLESS TALKING』

 

編者・聞き手は北中正和。1991年から開始された細野晴臣へのロングインタヴューをまとめ、1992年に刊行されている。いまから30年前。細野晴臣もまだ40代の半ばで、語りにもなにかを説明しようとする熱のようなものが感じられる(その後に出ている鈴木惣一朗によるインタヴュー本と比べると)。しかし、今となってはよくこの時期に細野晴臣の話を聞いていたな、という感じのタイミングだ。ちょうどアンビエントやワールド・ミュージックの方向を模索しているころ、アルバムとしては『omni Sight Seeing』が最新作。日本経済はバブルが崩壊してゆく真っ最中、しかし、オウム以前・阪神大震災以前、音楽業界の景気的にはこれからさらに盛り上がっていく頃、だ。日本も、日本の音楽環境も、決定的に今とは違う時代の細野晴臣の声を捉えている。別に細野晴臣の言葉から時代の影響のようなものが大きく聞こえてくるわけではないのだが、経済的なものに取り込まれているポップ・ミュージックの人間である意識は強く感じられる。

面白かったのは「散開」前のYMOの活動も盛んだった同時期に、松田聖子などのアイドルにも楽曲を提供していた頃のエピソード。この頃の細野晴臣は曲ができていないのに、さもできている風な顔でスタジオに現れて、その場で追い込まれる状況をわざわざ設定し、アイドルへの楽曲を生み出していたのだという。