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文化的消費活動の日記

柳井正 『一勝九敗』

 

一勝九敗 (新潮文庫)

一勝九敗 (新潮文庫)

 

もはやユニクロといえば「平成の国民服」とでもいうべきブランド、と言えるだろう。もちろん、わたし個人の生活にも相当ユニクロは入りこんでいて、下着が全部ユニクロだから「ユニクロの商品を着ていない日がゼロ」という感じである。そういう人がいまめちゃくちゃ多いんじゃないか、と予想する。そのユニクロを世界的な企業まで押し上げた著者がプレ・ユニクロ期(1984)から2003年までの20年余りの足取りを振り返った本。成功も失敗も細かく書いてあり面白い本だった。

とくに最初期のバタバタした部分が面白い。著者がテレビにでているときの、なんか淡々とモノを言う静かな怖さが本書の語りのトーンにもでているのだが、その語り口で、信用とか知名度があんまりなかった頃に舐めた対応をとってきた業者の実名で書いていたり、地銀の支店長とガチでやりあった話など、なかなかコクがあって良い。

本のタイトルにもあるとおり、どうやってもビジネスは一勝九敗ぐらいになってしまう、と著者は言う。大切なのはいかに早く勝負をしかけ、ダメだと思ったらサッと引く。負け際の見極めが重要であり、負けからいかに学んで生かしていくのか。リーン・スタートアップ的な経営方針が貫かれていることが本書から読み取ることができる。負け方と負けた後が重要なのだから、本書の読みどころは成功部分よりも失敗部分のほうにある。