哲学がわかる 自由意志 (A VERY SHORT INTRODUCTION)
- 作者: トーマス・ピンク,戸田剛文,豊川祥隆,西内亮平
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2017/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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オックスフォード大学出版の良シリーズ「A Very Short Introduction」から哲学関連のタイトルがセレクトされた翻訳が出ている。原書のこのシリーズは、とてもコンパクトなのに内容が濃くて「なにか勉強してみたいことが見つけたけれど、日本語で良さげなものが見つからない」っていうときに重宝していたから、こういう企画はありがたい。今回読んだ『自由意志』のほかには『形而上学』、『因果性』というタイトルが選ばれている。こちらもいずれはチェックしてみるつもり。
……だったのだが、この『自由意志』、翻訳がなかなかアレなので、ちょっと他のに手を出すのが怖くなってくる。翻訳、というか、まるで機械翻訳のごとき逐語的な日本語への「変換」であって、読みにくくてしょうがない。「お前は日本語でもこんな無駄な言葉が多い文章を書くのか!?」と翻訳者と編集者を問い詰めたくなり、読んでいてほとほとうんざりした。翻訳の質が哲学をわからなくしているし、本の魅力を損なっているのではないか。無駄な表現をザクザク切ったら、2/3のヴォリュームにできるんじゃないか?
内容は、通史的に書かれてはいるけれど、分量が分量なので混みいった話はほとんどなし。古代から中世、近代、そして現代における「自由意志」をめぐるトピックをまとめている。ほとんど固有名もあがってこないのだが、近代における自由の概念の転回点にホッブスの名前があがってくるのが印象的なぐらい。だからこそ、なおさら、サラリと読める日本語にしといてよ、と思ってしまう。
そもそもなぜ「自由意志」が哲学上の問題になるのか、ってところがやはりポイントであって、本書では「意志を認めないと人が悪いことしても裁けないよね、責任を問えないよね」というのが神学上の問題なったからなんだよね、と説明されている。意志と責任がセット、と言えば、昨年の『中動態の世界』が思い出される。國分功一郎の本と一緒に読むと面白いんじゃないか、とも思うが、繰り返しになるけれど、ホントに日本語が残念。
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