フランクフルト学派の本を読み終えて「そういえば、菊地成孔がアドルノについて言及している本があったよな」と思い出して本書を注文していた。2007年にでた本なので、とっくに絶版、中古でしか手に入らないようなのだが「これはそろそろ熟していそうだぞ、読み頃にちがいない」という予感が的中。今読んでも、というか、サブスクリプションサービスによってあらゆる音源が、ほぼ無限に聴取可能になった現代において、本書の有効性は増している、とも言えよう。大変面白かった。
本書の元になっているのは
200CD 菊地成孔セレクション―ロックとフォークのない20世紀 (学研200音楽書シリーズ)
- 作者: 菊地成孔
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 単行本
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というディスクガイド。このディスクガイドのためにおこなわれた対談(2005年)と新たな対談(アフリカをテーマにしたもの)が収録されている。いずれもすでに10年以上の月日が対談から経過しているわけだが、すでに低音重視のサウンド・メイキングというトレンド(といっても顕著なのはUSのR&Bという領域にほぼ限定されている、と言っても良いのだが)に言及されており、菊地成孔がもつ時代の読解力に改めて感心させられた。
本書において「(アフロ・ポップ以外)80年代は永遠にダメ(再評価されない)」という結論めいたものが提出されているのだが、これは果たしてどうか。ファッションについては、ダブルのジャケットのスーツを着た若者を溜池山王で見てしまってから、80年代後半から90年代前半ぐらいの感じがマジで復権してきているんだろうなと(仕事で原宿をうろつくことが多く、ユース層の髪型とか見ててもそう)思う*1。本書の主張がこれから風化するとしたら「永遠にダメではなかった」という点においてかもしれない。
なお、全体的にPC配慮、というか自主規制的なガードが今より薄くて「今これを言ってても、表に出ないだろな」という発言がチラホラ載ってる。懐古的であるが、対談芸人としての菊地成孔の面白さはこの頃がピークだったのかも。生の菊地成孔のMC(つまりはオフレコ)の面白さがまだ生きた状態で掲載されている、というか。