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文化的消費活動の日記

ウィリアム・フォークナー 『サンクチュアリ』

フォークナーは『八月の光』を7年前に読んで以来らしい。

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当時の記録を紐解くと、かなり感銘を受けていたようだがどんな話だったか今となってはまったく覚えていない。それゆえに『サンクチュアリ』を読んだときの感想はまるではじめてフォークナーを読んだ人間のように新鮮なものになったかもしれない。

フォークナー、ヤバすぎ! なんでこんなヤバい小説書いててノーベル文学賞とってんだよ、って感じである。『サンクチュアリ』の陰惨さだけ注目すると、いまのノーベル文学賞受賞者のなんというか優等生っぷりっていうんですか、ヒューマニズム的な視点っていうんですか、そういうのからかけ離れているように思う。

禁酒法時代のアメリカ、ブルーズの土地である南部を舞台にしたとにかくひどい人間か、人生が呪われちゃってんじゃねえかっていう人間しか基本的にでてこない陰惨な物語なのだが、フォークナーの書きぶりがすごい。のっけから「なにがはじまるんですか」と物々しく重い空気が文章になっているようだ。主人公のひとりであるホレス・ベンボウという弁護士が泉で水を飲んでるだけなのに。

このホレスには本作のなかで数少ない恵みのような、救いをもった人物であるのだが、彼もまたなんかややこしい家庭問題を抱えており、うんざりする。読んでるうちにもっとうんざりさせてくれ! みたいな気持ちにもなってくる。構造的には探偵小説/ミステリーみたいなところもありつつ、最後までしっかりと後味が悪くて最高だった。