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文化的消費活動の日記

『ユリイカ 1月臨時増刊号: 総特集*ジャン=リュック・ゴダール - 1930-2022』

ユリイカ」のゴダール追悼特集にようやく目を通す(いま思い出したが前回(2015年)のゴダール特集号も買ってた気がする*1)。600ページ超に渡って繰り広げられるゴダールに関する論考を隅々まで読み切れているわけではないのだが(正直、読めたもののほうが少ない)前半に収録されているゴダール関係者の証言などはかなり興味深く読めた。たとえば『アルファヴィル』や『女は女である』などに関わった撮影監督のラウル・クタールは、ゴダールがフィルムやキャメラに関する技術的な事柄に精通していながら「キャメラのレンズは人間の目と同様の性能を発揮するはずだ」という妄執に近い考えにこだわっていた、と証言する。『アルファヴィル』では暗がりのなか照明を使わずに撮影し、その結果、2、3000フィートの真っ黒な何も映っていないフィルムが残された……驚くべきことにゴダールはその真っ黒なフィルムを本編のなかで使用しているのだという。山田宏一はこの真っ黒な画面にゴダールの妄想が投影されている、とロマンティックに語っているのだが、わからなくもない。映画も本も音楽も大好きな(左翼のインテリ、そしてスポーツマン)のにその作品に映し出される愛がどうにもいびつである、という天才性とその愛らしさを感じるエピソードであると思う。

*1:本棚を探したらなかったので立ち読みしただけかも……