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文化的消費活動の日記

カシヤマのオーダースーツ攻略

先日書いたカシヤマのオーダーシャツに関する記事の続編的にオーダースーツについても書いてみる。写真は右のネイビーがオールシーズンのスーツで、このスーツの塩梅があまりに良かったので左のグレーを夏用に(背抜きで)作った。

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シャツ編では「最初は店舗で測ってもらい、あとはオンラインで良いんじゃないか」という話を書いていた。スーツはどうか。結論から書いておくと「前回頼んだものとまったく同じものを注文したい」というニーズでもない限り、毎回店舗でオーダーするのが良さそうだ。採寸自体は初回のデータが使えるが、スーツは選べるオプションがシャツに比べると格段に多いので、実際にサンプルを見ながら選んでいかないと仕上がりのイメージが全然わからない。安い買い物ではないので当たり前だけど、慎重にいきたい。

カシヤマのオーダースーツはパターンオーダーだが、生地のグレードに応じて縫製工場が変わってくる。スタンダードな生地では、中国・大連工場における縫製。よりプレミアムなハイグレード生地では日本国内の工場で縫製となる。

スタンダードか、ハイグレードか

スタンダード生地は、33000円〜99000円ぐらいの価格帯(生地の値段に各種オプションが加わってトータルの価格になる)。下を見ると吊るしのスーツとそれほど変わらないが、せっかくオーダーするならば高めの生地を選ぶのが良い気がする。自分が作ったネイビーの方は、スタンダード・グレードのなかの割と高めの生地(イタリアの有名な生地メーカーのもの)にしたのだが「え、この価格で、このクオリティ!?」という仕上がりだった。大連工場で手掛ける生地は、カシヤマが生地メーカーから一括で買いつけることで生地の調達コストを圧縮してるらしいので、コスパがかなり良くなっている、ということらしいのだが、それを実感できる仕上がりだった*1

選んだ生地はこれ。説明書きにはオールシーズン生地で目付け(生地の重さ)が240gと夏スーツにも使えなくもない比較的軽い生地。「光沢と横ストレッチに優れており」と説明にもあるが、生地の艶が程よくシックな印象である。

(トイレから失礼します)写真からはちょっとその感じがわからないですね。サイズを自分仕様に測って作ってもらっている、ということももちろんあるのだが、良い生地のスーツの着心地の良さはぜんぜん違う。とくにこの生地は柔らかさと生地の艶の印象で、いい塩梅の「トロみ」があって、生地に触れるたびにちょっと良い気持ちになれる。裏地を有料オプションでキュプラ100%にしたのも良かったのだと思う(通常はポリエステル素材)。

ハイグレードの場合

ハイグレードの生地は最低12万ぐらいからだという。2着目のスーツは結果的に国内縫製のハイグレード生地になった。もともとそういうつもりではなかったのだが、2着目はグレー(無地)で作りたいと思っており、かつ、もし夏の結婚式に呼ばれても着ていける色合いの暗めで、かつ軽い生地で……という要望を叶えようと思ったら、スタンダードにはそういう生地がなかったのだった(オンラインでオーダーができない生地だったので、Web上にも情報が掲載されていない。店舗でしか選べない生地がある、というのもまた店舗に行かなきゃいけない理由でもある)。

お店の人曰く「国内縫製だと大量買付した生地ではなく、オーダーごとに注文する形になるのでコスパでいうとスタンダードのほうが良い」とのことだったが、大連縫製と国内縫製では選べるオプションがかなり違ってくる(国内縫製のほうが選択肢や変えられるオプションが多いし*2、標準のプラスティックのボタンでも質感が良い。代表的な仕様違いについてはこのページに記載がある)。

裏地の素材に関してもポリエステルか、キュプラかという二択ではなくキュプラと綿の混紡素材なども選べる(柄の種類も増える)。お店の人が「夏スーツはキュプラ綿混紡にしてます」というので(メリットについても教えられたが忘れた)ペイズリーのキュプラ綿混紡の裏地にしてみた。グレーにこの鶯色の組み合わせがかなり渋い。店舗の受取時*3、仕上がりを見せてもらったときに「渋いっすね!」と声が出た。

(ジムの更衣室から失礼します)色以外見た目上は大連縫製のスーツと変えていないのだが、国内縫製だと芯地がフル毛芯(天然素材のもの)になっている(大連縫製はセミ毛芯)。細かいところだと、ネイビーのスーツではステッチをいれなかったのだが、こっちには入れた(電車でステッチが入ったグレーのスーツを着ているカッコ良い男性を見て真似した)。

さて、期せずしてカシヤマの大連縫製と国内縫製を比べることに鳴ったのだが正直、スタンダードで全然良いな、っても思う(納期も早い)。国内縫製では裏地の種類が増えて嬉しい……けれども、普段は見えない部分だし……このあたりはホントに趣味の世界でしかない(お前のスーツをだれが見てるんだ、的な感じである)。

かつてはSUIT SELECTのような量販店で、春夏・秋冬それぞれ2、3着揃えてたりもしたのだが、SUIT SELECTのターゲットである年代層から外れ、つまり、オジサンになってしまった。そういう年頃になってくると、ちゃんとしたスーツを持っているのも悪くない。というか、ちゃんとしたスーツだとスーツが嫌じゃなくなる、ということに気づきもする。この2着のスーツだけで夏と夏以外の運用を数年やっていくつもりだけれど、魔が差したらまたなんか作ってしまうかも。

(以下の有料部分ではそれぞれのスーツが実際おいくらだったのかなど公開しています)

*1:なお、安い価格帯の生地だと芯地と呼ばれるスーツのシルエットを整えるために表地と裏地のあいだに入っている素材も変わるらしい

*2:たとえばステッチ幅や、内ポケットの仕様など

*3:通常はスーツが仕上がったら自宅に直送されてくるが、たまたま店舗受取にしていた。店舗受取のほうが2、3日早く受け取れる、という風に言われた

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