sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

2022年9月18日、あるいは

6時過ぎに起きる。チャップマンスティックを持っている知人からスティックを売ってもらう夢。スティックはシンセサイザーを内蔵している特別なもので(そんなものは実在しないと思う)、電飾まで付いててすごかった。朝食後、昨晩NUMBER GIRLオールナイトニッポンを配信で聴く。オールナイトニッポンを聴くのなんか20年ぶりぐらいかも。長渕剛のカヴァーや田渕ひさ子による歌唱などがあり良かった。聴きながら筋トレ、背中、上腕三頭筋

ラジオ終わりでレコードへ。色々聴き直す。

昼食後に「アイアンマンがでてる映画がみたい」というので観はじめる。アベンジャーズの世界のことはわからないのだがハイスクール映画とヒーロー映画のマッシュアップが面白い。スパイダーマンの動機づけに自己実現/承認欲求が入っている。Diversity / Inclusionの人種構成、さらにはグローバル経済、格差社会への批判、そしてサラリーマンであること。しかし「親しい人の親しい人と戦わなくてはならない」というスパイダーマン的主題も悲壮的になっていない。

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読んだ。

夕方、タワレコのオンラインでアウトレット商品を上から舐めて注文する、という罪を犯す。

Twitterで見かけた精神分析用語辞典を注文。松本卓也も「この事典の登場によって、ラカン研究の新たな水準が見えはじめた」とコメントを寄せている。

James Stanier 『エンジニアリングマネージャーの仕事: チームが必要とするマネージャーになる方法』

類書である『リーダーの作法』よりもHowTo/実践的なナレッジに富んでいて、スケジュールやタスクの管理方法(他人にとにかく時間をとられるマネージャーが自分の時間を確保するための重要なテクニックだ)や1on1のやり方、チームでの人間関係の作り方、人事設計、さらにはマネージャー自身のキャリアプランなどを紹介している。良い本。ぜひ、マネージャーのみならず、マネージャーと働くひとにも読んでほしい内容……というのも、ここにあるマネジメントのナレッジが「マネジメントされる側」と共有されることでやりやすさも改善されるんじゃないか、って思うので。

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2022年9月17日、あるいは気の乱れ

4時半ごろ起きる。少しぼーっとしてから筋トレ、上腕二頭筋、肩。バーを使わず普通にプッシュアップしてみたらだいぶ軽く感じる。その後、英語の勉強。ひさびさにDuolingoを30分以上やる。

朝から気分が晴れず、ツラい。

最近はじまった坂口恭平さんの日記を朝食後に流し読む(分量が毎回多すぎてしっかりと読めない)。いのっちの電話をやめて、家族との時間を、というモードなのだという。この急激なモード変化には共感を覚える。開くモードと閉じるモードが自分にはある。今は閉じるモードなのだろう、そこをいくつか無理やり「開こう」という外からの流れがあり、それになんとなく乗ってしまった、そしてそれが上手く行っていないことで〈気〉(とでも名付けよう)が乱れている、のかもしれない。

「ウィークエンドサンシャイン」。HはオープニングのOsibisaの曲が好きで、それを聴きながら踊っていた。その自由な動きを見ていたら少し気分が晴れた。

今日はプールに行く、と言っていたのが、また直前でキャンセル。

ブラームスピアノ協奏曲第2番をまた聴く。逆説的ではあるが古楽器オーケストラであるがゆえにわかるブラームスの豊かさがあるようだ。渋さ、枯れた、秋のブラームスではなく、ロマンティックなブラームス。それは古楽器オーケストラによるベートーヴェンとの対比において際立つ。

ポゴレリチショパンのアルバムが出ていたことに気づいた。冒頭のノクターンからやはり驚くべき遅さであるのだが、美しく整えられたタッチのおかげで澄んで聴こえる。これが「病的」と聞こえるとしたら、聴き手が病んでいる、ということだろう。ピアノ・ソナタ第3番の冒頭の和音からはロシア・ピアニズムを強く感じる。

昼頃からまた調子が悪くなってくる。昼食を食べたあとは寝室にこもっていた。

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読了。

夕方には細々とした仕事をするぐらいまで回復。しかし、また雲行きが悪くなってくる。どんどん身を軽やかにする必要を感じて、デバイスの集中モードをオンにして通知が全然来ないようにしてみたり、Twitterの通知を全部切ってみたりした。

吉田秀和 『私の好きな曲』

吉田秀和がひたすら好きな曲について詳しく解説していく文章を集めている。有名曲ばかりではなくヤナーチェクのオペラやヴォルフの歌曲などほんとうに個人的な偏愛曲のようなものも含まれている(ヤナーチェクのオペラ! それに手を伸ばそうという人が我が国にどれだけいるのか! しかしながら、現在の音楽視聴環境は気になればその音源にすぐさまアクセス可能なよう整えられているのである。インターネット万歳)。

面白い本だと思うのだが、読んでいて「あー、自分は〈音楽〉じゃなくて〈演奏〉のほうに興味があるのだなぁ」という改めての気付きがあった。譜例や楽理的な解説が挟まれていても、それを読むだけの能力は自分にはなく(クラシック音楽を20年以上聴いていても、そういう勉強は全然してなかった)、熱く楽曲の構造を解説されてもほとんどわからないのだった。吉田秀和が(たとえば)ピアニストの演奏について語っている文章よりも、この本は難易度が高いものなのだと思う。

ただ、それでも読んでいて「本当にそうだよなぁ」と共感してしまう文章も綴られていて、そういうのは驚いてしまった。バカみたいな言い方になるけれど「俺もそう思う!」みたいな箇所に出会ったりして。とくにリヒャルト・シュトラウスの《ばらの騎士》を取り扱った箇所で、著者はこのオペラをクラシック音楽、というか音楽のみならずヨーロッパの文化のある種の最高到達点のように書いていて、たまたまその箇所を読む前に《ばらの騎士》を聴いていて似たようなことに感じ入っていたのだった。

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2022年9月16日、あるいは〈法〉

4時半まで寝る。心がざわめく夢を見た*1。腹筋。朝からかなり涼しい。

Nightly News(9月14日分)。アメリカでは大規模な鉄道ストライキが懸念されいたのだという(別なニュースで、現時点で労働者と会社のあいだでストライキ回避の合意が得られている。バイデンが仲裁に入っているようだった)。Reality Winnerという言葉がでてきて「どういうことなのだろう? リアリティ・ショ―の出演者か?」と思ったら人の名前だった。リアリティ・ウィナー。ニュース中でも「珍しい名前」と言及されていた。機密文書を漏洩した罪で逮捕されてた人らしい。トランプの機密文書関連のニュースにコメントをしていた。昨夜のNHKのニュースでも見たが、デトロイトの自動車ショーでのバイデンの発言も取り上げられている。EV支援に75億ドル。さらにパタゴニアの創業者の寄付。素晴らしいと思うが日本では労働者の雇い止めをしてる会社。

著名人・知識人が今回の寄付について大きな賛辞を寄せていたがどうかしてると思う。

朝、ジョン・カビラの番組を聴いていたらまたRoxy Musicの「More Than This」が流れていた。今週2回目。今朝は朝までにビチッと英語勉強タスクを終えられたので良かった。これもリマインダーで管理するようにしよう、と思って、リマインダーをいじっていたらどんどん切迫感が強まってきて呼吸が詰まった。リマインダーによって〈法〉が強く作用しすぎている感じ。神経症者にはあまりこういうのはよくないのかもしれない。強迫性障害めいたストレスがかかってくる。〈法〉から逃れることなく、上手く付き合うことが必要だ。

相変わらず享楽的な存在である。冒頭から「Passionfruits」のヴァリエーションのような楽曲で「そのパターンも知ってる」という感想がでてきてしまい、なかなかの嫌な気持ちで聴いていたのだが聴いているうちに慣れた。楽曲は過去作のなかでも一番好きかも。堀込高樹が書きそうな曲……。

2021年のアルバム。シフとイギリスの古楽器オーケストラ、Orchestra of the Age of Enlightenmentによるブラームスのピアノ協奏曲。この録音はシフがピアノと指揮も兼ねている(ブラームスの弾き振り、ってかなり珍しい。俺はこの録音以外に知らない)。第2番から聴いたのだが、ピアノのブリリアントな高音をよく捉える録音で好感が持てる。録音はアビー・ロード・スタジオらしいのだが、かなりホールっぽいリヴァーブがかかっている(スタジオでこういう響きになるものなのか)。使用しているのは1859年製ブリュートナーだというのだが、モダンなコンサート用ピアノの重厚さとはまるで違う軽やかさがある。オーケストラは古楽器オーケストラのイメージに沿うような、乾いた速度……ではなく、時代なりのロマン主義的な厚い響きなのだが、それも素晴らしい。厚くいて同時に跳ねるように伸び縮みするテンポの動きが実に新鮮だ。

5km走る。Apple WatchのOSアップデートで走っているときのアナウンスももう少しこなれたものになっていた。良い感じ。

夕方までびっちり仕事。

夕食後に「ドラゴンボール」を見る。初期の「ドラゴンボール」はホントに良い。


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このEDも良い。

期待していた連絡がどれも良い結果に結び付かず落ち込む。

*1:学生時代の恋人のひとりと銀座でばったり出くわし、少し会話をして別れる、その後、もう一度会えないか街を彷徨ううちによくわからない場所に辿り着く。その相手にとってもはや完全に忘れられた存在であろうに、かつ、自分も思い出すことはなかったのだが、急に夢にでてきたから驚いた

2022年9月15日、あるいは現実界

5時半頃まで寝る。ジムに行った翌日は身体がキツいのか漏れなく寝坊してしまう。そして、めちゃくちゃ仕事っぽい夢を見てイライラして起きた。JavaScriptのライブラリのヴァージョンが変わったら、動きが変わっちゃって……みたいなことを相談されていた。そんなもんアップデート前に確認をちゃんとやらないとダメでしょ! と夢のなかでキレていた。嫌だったなぁ。具体的なだれか、ではないのだが、相談してきたのが「自分ではなにもわからない/なにも調べない」みたいな人で、どういう問題が起きているのかすらもちゃんと教えてくれず、とても嫌だった。夢の流れで少し仕事をしてしまってあまり勉強できず。

朝、幼稚園へHを送る。涼しいので徒歩でおしゃべりしながら行った。

仕事前にNightly News(9月12日分)。英国関連のニュースが続く。かつて英国統治下にあった国での話題のなかでは、ジャマイカでの英国君主に関する反感(過去の奴隷制などに関連している)についての話が興味深かった。

引き続き、METAFIVEの新譜を聴きながら仕事。音の即物的な気持ちよさが際立っていてカッコ良いし、小山田圭吾のギタリストとしての面白さもよくわかる。

いろいろと発狂しかけるような出来事が現実にもあったのだが、朝、幼稚園に行くついでに買ってきた甘いパン(栗のマフィン!)を食べたら少し落ち着いた。

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読了。

夕方、坂本慎太郎の新譜のLP発売について気づく。しかし、すでにもうどこも予約受付終了していたのだった……。余計な出費をしなくて済んだ、とプラスに捉えることにしよう。


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このPVもスゴい。Hもかなり食いついて見ていた。

読み進めていたらあらゆるタスクをタスクアプリで管理せよ、みたいな神経症的なことが書いてあったので素直に試してみる。

寝床でHにお話を作って聞かせながら寝る。

ニコラ・フルリー 『現実界に向かって: ジャック=アラン・ミレール入門』

ジャック=アラン・ミレール。ラカンの著作に触れようとする多くの人々がその名前を当たり前のように知っている(「セミネール」シリーズの編者であり、娘婿であり、ラカン自身によって「私を読むことのできる少なくとも一人の人物」と認められた精神分析家である)にも関わらず、その著作は一冊も翻訳がない(世界的にもスペイン語にしか翻訳されていないらしい)という状況ででた本邦初の「ミレール入門」。

コンパクトなヴォリュームで、ミレールの思想家/精神分析家としての歩みや、近年の薬物療法中心の精神医療との関わり、さらにラカンの「理論化」の様相を学べる良書だと思う。ラカン入門をある程度読んだ「ラカン入門の中級者」には、ミレールによる後期ラカンの解釈が驚くべきわかりやすさで提示されていることに感心するかもしれない……しかしながらその「わかりやすい後期ラカン」のエッセンスとして提示される分析の終わり、それが「症状への同一化」、つまりは自らの特異性を受け入れ、享楽せよ! という柔い自己啓発みたいにオチるのはどうしたものか……と思う。こんなに難しいこと書いてあって結論それ? みたいなところってある気がする。一方でこれを千葉雅也の『勉強の哲学』と接続するならば、症状への同一化を経た享楽とは「来たるべきバカ」ということなのかもしれない。

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