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文化的消費活動の日記

荒俣宏 『図鑑の博物誌』

図鑑の博物誌

図鑑の博物誌

 

荒俣宏の快著のひとつ。18世紀後半から19世紀前半のたった100年あまりの短いあいだに華開いた、動植物の美しい図版入りの本たちの文化、それがどのように成立したのか、美しい図版はどのように制作され、そして、なぜ、その文化は失われてしまったのか、という歴史的なストーリーをメインに据えているのだが、掲載されている図版を眺めているだけで楽しい。本の後半部分では、西洋のこうした図版が日本の画壇に与えた影響(秋田蘭画)にも触れられており、昔興味をもっていた日本絵画における西洋絵画の技術の流入、というテーマを思い出しもする。

しかし、鹿島茂と肩を並べるビブリオマニアにしか書けない本であるなぁ……と感心させられる。本郷の古書店で、大変貴重な博物学書をものすごく安く手にいれた、というロマンティックな話も記されている(大変うらやましい)。著者自身もおすすめしているように姉妹書『大博物学時代』と一緒に読むとなおのこと楽しいし、こないだ紹介した『フンボルトの冒険』とも関連する本。

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