sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

島泰三 『親指はなぜ太いのか: 直立二足歩行の起原に迫る』

親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) 作者:島 泰三 中央公論新社 Amazon 以前に福尾匠さんの日記で紹介されていた本。霊長類の形態がその主食によって決定されているという「口と手連同仮説」をもって人類の進化の謎にアプローチせん、…

つげ義春 『つげ義春日記』

つげ義春日記 (講談社文芸文庫) 作者:つげ義春 講談社 Amazon 昭和50年から昭和55年(1975年〜1980年)の日記。このあいだに息子の誕生、妻の癌、自らのノイローゼという出来事が大きなイベントのように発生している。妻との口論の内容までもが記録されてお…

栗原康 『大杉栄伝 永遠のアナキズム』

大杉栄伝 永遠のアナキズム (角川ソフィア文庫) 作者:栗原 康 KADOKAWA Amazon アナキスト大杉栄の生涯をその周辺の運動家も含めて、ユニークな文体で追っている。単行本が刊行されたのは2013年、文庫化が2021年なのだが大杉の提供するアナキズム……それをも…

『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン 実績・省察・評価・総括』

プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン 実績・省察・評価・総括 作者:株式会社カラー グラウンドワークス Amazon 映画「シン・エヴァンゲリオン」の制作担当者によるプロジェクト報告書。いにしえの「考察本」のような体裁なのだが、オフィシャルのプロダク…

ガブリエル・ガルシア=マルケス 『生きて、語り伝える』

生きて、語り伝える 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス 新潮社 Amazon ガルシア=マルケスの自伝……と言っても、本文が600ページ超というなかなかの大著にもかかわらず、語られているのは20代後半まで、ジャーナリストとしての仕事を本格化させるまでで彼の…

仲正昌樹 『今こそルソーを読み直す』

今こそルソーを読み直す (生活人新書) 作者:仲正 昌樹 NHK出版 Amazon ルソーに関する伝記的省かれているもののルソー入門に「一冊」を選ぶならこれになりそう。ときに矛盾を指摘されるルソーの主張に関して無理やり整合性をとるのではなく、時と場所によっ…

三笘薫 『VISION 夢を叶える逆算思考』

VISION 夢を叶える逆算思考 作者:三笘薫 双葉社 Amazon もうすぐ6歳になる息子が知ってるスポーツ選手といえば、野球の大谷とサッカーの三笘のふたり。わかりやすくスポーツ選手に憧れていて、こないだはエンゼルスのキャップを買わされたし(New Eraのエン…

坂本龍一 『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』

ぼくはあと何回、満月を見るだろう 作者:坂本龍一 新潮社 Amazon 完璧な死に際を自分で整えてきたことに改めて感嘆する。近年の中国でのアート活動や、陶器のアート・ピースやお香といったよくわかんないプロダクトなど自身のSNSでは言及されていたがアクセ…

『哲学の歴史 第7巻: 理性の劇場【18-19世紀 カントとドイツ観念論】』

哲学の歴史〈第7巻〉理性の劇場―18‐19世紀 カントとドイツ観念論 中央公論新社 Amazon 以前にドイツの近世哲学について理解を深めたい、と思って買っておいたもの。哲学的なトピックだけでなく観相学や自然哲学、ロマン主義のようなものも取り扱っている。当…

千葉雅也 『エレクトリック』

エレクトリック 作者:千葉雅也 新潮社 Amazon 千葉雅也の最新作。文芸誌に掲載されたときには読めなかったのだが(手に入らなかった)ロラン・バルトがついに達成できなかったロマネスクを引き継ぎながらサスペンス的なロマンに結実させた作品であるように思…

源河亨 『悲しい曲の何が悲しいのか: 音楽美学と心の哲学』

悲しい曲の何が悲しいのか:音楽美学と心の哲学 作者:源河 亨 慶應義塾大学出版会 Amazon 心の哲学を音楽美学に応用しながら音楽を聴くときになにが起こっているのかを解きほぐしていく本。入門書的な感じであれこれの学説を紹介しながら平易な言葉で綴られて…

佐々木英俊 『最強のナンバー2 坂口征二』

最強のナンバー2 坂口征二 作者:佐々木英俊 イースト・プレス Amazon 日本のプロレス黎明期から成長期、全盛期にトップ・レスラーとして活躍し、レスラー引退後は新日本プロレスの経営者として浮き沈みのある環境を乗りこなしてきた坂口征二公認の伝記。 鬼…

野中郁次郎・竹内弘高 『知識創造企業』

知識創造企業(新装版) 作者:野中 郁次郎,竹内 弘高 東洋経済新報社 Amazon たしかスクラム開発とかアジャイル開発とかの本を読んでいるときに、スクラムというフレームワークのもとになったのがこの本だ、みたいな記述に出くわして手にとった。1970年代・1…

デヴィッド・バーン 『音楽のはたらき』

音楽のはたらき 作者:デヴィッド・バーン イースト・プレス Amazon 近年は「アメリカン・ユートピア」の成功で再び脚光を浴びることとなったミュージシャン、デヴィッド・バーンの第2著作。初版は2012年で、翻訳は2017年のペーパーバック版を底本としている…

マーク・チャンギージー 『ヒトの目、驚異の進化: 視覚革命が文明を生んだ』

ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ (ハヤカワ文庫NF) 作者:マーク・チャンギージー 早川書房 Amazon なぜ、人間には色が見えるのか、人間の目はなぜ前を向いてついているのか、錯視はなぜ起こるのか、文字はどうしてあんな形なのか。視覚にまつわ…

武満徹 『武満徹著作集 3』

武満徹著作集〈3〉遠い呼び声の彼方へ・時間の園丁・夢の引用 作者:武満 徹 新潮社 Amazon 80年代後半から90年代(晩年)のコンサート・パンフレットへの寄稿や新聞連載、映画についての文章がまとめられている。今なお続くサントリーホールのサマー・フェス…

坂本龍一 『音楽は自由にする』

音楽は自由にする (新潮文庫) 作者:坂本 龍一 新潮社 Amazon 『音楽の歴史』は期待はずれだったが2009年刊行の『音楽は自由にする』のほうは面白い。鈴木正文を相手にした本人の語りによる自叙伝。ずっとこのタイトルについて「『音楽は自由にする』ってどう…

蓮實重彦 『ショットとは何か』

ショットとは何か 作者:蓮實重彦 講談社 Amazon 「ショットとは何か?」と問われながら、その問いに対して真正面に「ショットとは◯◯である」という断定や定義を避けながら、あくまでも脱-理論的にショットについて物語ろうとする著作。蓮實重彦の映画関連の…

松田行正 『眼の冒険: デザインの道具箱』

眼の冒険 ――デザインの道具箱 (ちくま文庫) 作者:松田 行正 筑摩書房 Amazon 古今東西のさまざまなデザイン要素、あるいはその類似に関する短いエッセイが集められている。杉浦康平とか高山宏とかの名前がでてきて、なるほど、そういう趣味の人の本か、って…

眞木啓子 『ようびの器: ものみな美しき日々のために』

ようびの器 ものみな美しき日々のために 作者:眞木 啓子 青幻舎 Amazon 大阪にある器のお店の本。全然知らないお店であったのだが、器の用い方であったり、その制作であったりに関するある種の美学(民藝的なもの)が提示されていて勉強になるばかり。

ウェルギリウス 『牧歌/農耕詩』

牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書) 作者:ウェルギリウス 京都大学学術出版会 Amazon 先日甚野尚志 『中世ヨーロッパの社会観』 - sekibang 3.0を読んだ際にウェルギリウスの「農耕詩」の記述が中世に至るまである種のHowTo農業本であったみたいなことが書いてあり…

菊地成孔 『服は何故音楽を必要とするのか?: 「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽たちについての考察』

服は何故音楽を必要とするのか? (河出文庫) 作者:菊地成孔 河出書房新社 Amazon 「ファッションニュース」誌で連載されていた菊地成孔による連載の2003年から2007年分をまとめた本(単行本化される際に増補がおこなわれている)。ファッション・ショーをそ…

桑木野幸司 『ルネサンス庭園の精神史: 権力と知と美のメディア空間』

ルネサンス庭園の精神史:権力と知と美のメディア空間 作者:桑木野 幸司 白水社 Amazon サントリー学芸賞受賞作。記憶術に関する著作や建築関連の翻訳で知られる研究者が2019年に刊行した庭園史に関する著作。14世紀のイタリアの文人たちによって再発見された…

村上靖彦 『自閉症の現象学』

自閉症の現象学 作者:村上 靖彦 勁草書房 Amazon 現象学・フランス哲学を専門とする研究者が、自閉症に関するフィールドワークをもとにフッサールの現象学を(ときに批判的に)用いながら、自閉症児が生きる認識の世界を描こうとしたもの。著者はその後、こ…

村上春樹を英語で読み直す 『風の歌を聴け(Hear the Wind Sing)』

Hear the Wind Sing 作者:Murakami, Haruki Random House UK Ltd Amazon 英語版と原本(自分がもっているのは講談社文庫版)の違いについて書いておく。英語版には冒頭に The Birth of My Kitchen-Table Fiction という作者による序文のようなものが附されて…

久世光彦 『ニホンゴキトク』

ニホンゴキトク (講談社文庫) 作者:久世 光彦 講談社 Amazon 向田邦子と仕事をしていた演出家による日本語に関するエッセイ集。なんの本で言及されていたか忘れたがなんか面白そうだったので読んでみた。95年ぐらいの週刊誌連載をまとめたものでオウム真理教…

吉村栄一 『坂本龍一 音楽の歴史』

坂本龍一 音楽の歴史 ~A HISTORY IN MUSIC~ 作者:吉村栄一 小学館 Amazon 1952年〜2022年までの坂本龍一の活動を記録した評伝。音楽活動が中心となっているので若い頃を除いてはほとんどプライヴェートな部分に関する記述はなく、歴史の教科書のように淡々…

劉慈欣 『三体』

三体 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon もはや旬はとっくに過ぎた感じはあるが、かつて話題を読んだ中国のSF小説を読み終える。「三体」三部作の1作目にあたるもの。物語上の設定を滔々と説明するようなところがSF小説に対する個人的な苦手意識を形成する要因の…

『ユリイカ 1月臨時増刊号: 総特集*ジャン=リュック・ゴダール - 1930-2022』

ユリイカ 2023年1月臨時増刊号 総特集◎ジャン=リュック・ゴダール ―1930-2022― 作者:蓮實重彦,ニコル・ブルネーズ,四方田犬彦,フレドリック・ジェイムソン,堀 潤之,松本圭二,伊津野知多,黒田硫黄 青土社 Amazon 「ユリイカ」のゴダール追悼特集にようやく目…

田崎基 『ルポ 特殊詐欺』

ルポ 特殊詐欺 (ちくま新書) 作者:田崎基 筑摩書房 Amazon ノンフィクション・ライターの高橋ユキさんが昨年注目の一冊としてあげていらした本。筆者は神奈川新聞の司法記者でタイトルの通り特殊詐欺を追ったルポタージュ。 特殊詐欺を題材とした本には、本…